高齢の親が「最近、肉が硬くて食べにくい」「せんべいを避けるようになった」と話したとき、すぐに介護食やムース食へ替えればよいのでしょうか。
結論から言うと、先に「噛みにくいのか」「飲み込みにくいのか」「歯や義歯が痛いのか」「食事量や体重まで落ちているのか」を確認することが重要です。
硬いものが食べにくい理由は一つではありません。歯・義歯の問題、噛む力の低下、口の乾燥、飲み込みの問題、体調変化などが関係する可能性があります。
家庭だけで原因を診断せず、変化の内容を整理して歯科・医療・介護の専門職へつなげることが第一歩です。
先に結論|「硬いものが食べづらい」だけで食形態を決めない
厚生労働省の高齢者向け資料では、「半年前に比べて固いものが食べにくくなった」場合、咀嚼機能が低下している可能性があると整理しています。
一方、「お茶や汁物でむせる」場合は、嚥下機能が低下している可能性があるとしています。
つまり、
- 固いものを噛めない
- 水分でむせる
- 食べ物が喉に残る感じがする
- 歯や義歯が痛い
は同じ「食べづらい」でも確認するポイントが違います。
家族が「高齢だから柔らかい食事にすればよい」と一括りにしないことが大切です。
家族が最初に確認したい6項目
1.何が食べにくくなったか
「硬いもの全部」ではなく、具体的に聞きます。
- 肉
- 生野菜
- せんべい
- パン
- ご飯
- 水・お茶
- 汁物
- パサつく食品
硬い物だけなのか、水分や柔らかい物でもむせるのかで相談時に伝える情報が変わります。
2.歯・義歯・口の痛みはないか
歯が欠けた、歯ぐきが痛い、義歯が合わない、口内炎があるなど、噛むと痛いため硬い物を避けている場合があります。
厚生労働省は、歯科治療や義歯調整などによって咀嚼機能の改善につながる場合があると案内しています。
「年齢のせい」と決めず、歯や義歯の状態も確認します。
3.食事中や食後にむせないか
国立長寿医療研究センターは、摂食嚥下障害の症状として、食事中・食後のむせ、お茶などの水分でのむせ、食べる量の減少、食後に喉に物が詰まっている感じなどを挙げています。
特に「硬いものが噛みにくい」だけの場合と、「水やお茶でもむせる」場合は分けて考えてください。
むせや飲み込みの問題がある人に、家族判断だけで食形態やとろみの濃さを決めて「これなら安全」と断定することは避けます。
4.食べる量が減っていないか
食べづらくなると、本人が無意識に食事量を減らすことがあります。
- 食事を残す量が増えた
- 肉・魚・野菜を避ける
- 麺やおかゆだけに偏る
- 食事時間が極端に長くなる
- 食べること自体を面倒がる
といった変化を確認します。
口腔機能の低下によって食べられる食品が限られると、十分な栄養を摂りにくくなることが厚生労働省の資料でも示されています。
5.体重が減っていないか
厚生労働省の高齢者向け資料では、「6か月間で2~3kgの体重減少」がある場合を低栄養リスクに気づくための確認項目として挙げています。
体重が減った理由が分からない、体調不良がある、食事が十分に取れていない場合は、かかりつけ医などへの相談を検討するよう案内しています。
「少し食べにくいだけ」と思っていても、食事量と体重まで落ちているなら放置しない方がよいサインです。
6.いつから変わったか
半年かけて少しずつ硬い物を避けるようになったのか、数日で急に食べられなくなったのかも重要です。
急な体調変化、口や歯の強い痛み、食事や水分が十分取れない状態などがある場合は、用品や介護食を選ぶことより医療・歯科への相談を優先します。
「噛む問題」と「飲み込む問題」を分ける
【編集部整理】
| 家族が気づく変化 | 考えるべき相談先の例 |
|---|---|
| 硬い物を噛みにくい、歯・義歯が気になる | 歯科 |
| お茶・汁物でむせる、食後に喉に残る感じ | 医療機関・歯科など |
| 食事量・体重が減っている | かかりつけ医、管理栄養士等 |
| 介護全体で誰に相談すべきか分からない | 地域包括支援センター |
これは診断表ではありません。症状から病名や必要な食形態を家庭で決めるためのものではなく、相談先を整理するための目安です。
「地域包括支援センターには何を相談できる?」でも公的相談先を整理しています。

家庭で食事を変えるなら「食べられる量」を落としすぎない
専門職へ相談するまでの間、本人が食べにくい食品を無理に食べさせる必要はありません。
調理では、
- 十分に加熱して硬さを調整する
- 食べやすい大きさにする
- パサつきを抑える
- 本人が食べやすい料理を選ぶ
といった工夫を検討できます。
ただし、「細かく刻めば誰でも安全」「柔らかければ誤嚥しない」「水にとろみを付ければ安全」とは言えません。
飲み込みの状態に合う食形態は個人差があり、必要に応じて医師、歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士等の評価を受けてください。
すぐ「介護食を買う」必要がない家庭もある
食べづらさの原因が、義歯の不具合や歯の痛みなどであれば、食事商品を変える前に歯科で対応できる場合があります。
また、家庭の調理で十分食べやすくでき、体重・食事量が保てている場合は、市販の介護食を必ず購入しなければならないわけではありません。
逆に、家庭調理だけでは負担が大きい、必要な食形態を専門職から示されている、食事準備が難しい場合には、市販のやわらか食・介護食を利用する選択肢があります。
商品購入を先に決めず、「何が食べにくいのか」を整理してから選びます。
歯科健診など公的な機会も確認する
厚生労働省の2026年度後期高齢者医療制度事業では、口腔機能低下の予防等を目的に歯科健診を実施し、地域の実情に応じて咀嚼能力・舌機能・嚥下機能などの評価を行う枠組みが示されています。
実際の対象年齢、受診券、費用、実施期間は広域連合・自治体で異なります。
親の自治体から届く後期高齢者向け健診案内や、市区町村の「歯科健診」「高齢者歯科健診」を確認してください。
無料または低負担の健診機会が利用できる場合は、商品を買う前の確認手段になります。
本人の尊厳|「食べられない人」と決めつけない
家族が心配すると、本人がまだ食べられる食品まで一律に柔らかくしたくなることがあります。
しかし食事は栄養だけでなく、楽しみや生活習慣にも関わります。
本人へ、
- 何が食べにくいか
- 何なら食べやすいか
- 歯や口に痛みがあるか
- 好きな食べ物をどう残したいか
を聞きながら調整します。
本人の状態を確認せず、家族の不安だけで極端に食形態を変えないことが大切です。
相談を優先したい状態
次の変化がある場合は、食事商品の比較だけで済ませず、医療・歯科等へ相談してください。
- 水やお茶でも繰り返しむせる
- 食事中・食後のむせが増えた
- 食べた後に喉に残る感じを訴える
- 食事量が大きく減った
- 6か月で2~3kg程度の体重減少がある
- 歯・義歯・口の痛みがある
- 食べづらさが急に強くなった
国立長寿医療研究センターは、摂食嚥下障害の原因には口腔や歯の問題も重要であり、原因を明らかにしたうえで対応することが必要としています。
家族がメモしておくと相談しやすいこと
- 1. 食べにくい食品
- 2. むせる食品・飲み物
- 3. いつから始まったか
- 4. 1食にかかる時間
- 5. 食事を残す量
- 6. 最近の体重
- 7. 歯・義歯・口の症状
- 8. 服薬や体調の変化
離れて暮らす場合は、電話だけで判断せず、帰省時や訪問者、介護職などから食事中の様子を確認できると情報を整理しやすくなります。
まとめ
高齢の親が硬いものを食べづらくなったら、すぐに介護食へ切り替えるのではなく、まず「噛めないのか」「飲み込みにくいのか」「歯や義歯に問題があるのか」「食事量・体重まで減っているのか」を確認します。
硬い食品だけの問題と、水・お茶でのむせは分けて考える必要があります。
家庭で病名や安全な食形態を判断せず、変化を記録して歯科・医療・介護の専門職へ相談してください。公的な歯科健診などを利用できる地域では、その機会も確認するとよいでしょう。
確認した公式資料
- 厚生労働省「おいしく食べて低栄養予防!」
- 国立長寿医療研究センター「摂食嚥下障害」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連」
- 日本歯科医師会「オーラルフレイル」
- 厚生労働省「令和8年度後期高齢者医療制度事業の実施について」
最終確認日:2026年8月19日


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